治験と乾燥機
乾燥機で再びトラブルが起きた。
ある日、僕の隣のベッドの治験者がえらい剣幕で怒りを発していた。
院内のスタッフが何とか彼をなだめようと説得していた。
話を聞くと、どうやらベッドの人が洗濯機に入れておいた洗濯ものを次に洗濯機を使用する人が邪魔に思い、勝手に乾燥機の中に入れて作動させてしまったようである。
そしてその人は自分の洗濯ものを洗濯機に入れて作動させた。
ベッドの人は洗濯場に行ってみると自分の洗濯物がないことに気付いた。
そして戸惑いとともに怒りが込み上げてきたようだ。
そのうえ乾燥機に入れられた洗濯ものは全部揃っていなかったらしい。
つまり入れ忘れが生じてしまったのだ。
そしてその入れ忘れの洗濯物は行方不明となってしまった。
さすがにこれは怒るのも無理はない。
ベッドの人は怒りを撒き散らした後、ベッドのカーテンを閉めて一人の世界に閉じこもってしまった。
その後も乾燥機にまつわるトラブルが続出した。
とうとうスタッフによって勧告が出されてしまった。
これからは予約表に記入しないで勝手に洗濯機と乾燥機を使用した者はその洗濯ものをスタッフの下で預からせてもらうということになってしまったのである。
また一つ面倒な決まりごとが定まってしまったのである。
こういう風にして世の中は少しずつ息苦しくなっていくのだろうか?
現在24人の治験者の間で洗濯機と乾燥機の割合が低すぎてトラブルを招いているのかもしれない。
洗濯機は2台、乾燥機は3台が常時作動している。
シャワー室などの数に比べて少し少ない気がする。
そしてこの院内では治験者とスタッフとのコンタクトが取り辛いこともトラブル増加の理由の一つかもしれない。
スタッフの常駐部屋はオートロックされている。
色々と問題が表面化されてしまったのである。