治験と看護師

院内の看護師はだいたい17人いる。

女性の方が12人くらい。

普段は3人から5人くらいが採血や検査などをして回っている。

その中に一人、すごく女を意識したおばさん看護師がいる。

他の人は皆、白の作業衣を着ているのに彼女だけ薄いピンクの作業衣を着ている。

今日に限っては両肩から斜めにショッキングピンクのラインが入っているSFアニメの艦内スーツみたいな作業衣を着ていた。

 

 

 

 

その人は採血でもお気に入りの治験者の番になると親しげにプライベートな話をして盛り上がっている。

マッチョの治験者にはシナを作っている。

彼女のそれぞれの相手への態度の激変ぶりに、見ていて寒気がしてくる。

僕はその人が苦手だ。

できれば採血も他の人がしてくれることを祈ってしまう。

 

 

 

 

食堂で食事の用意をしてくれる人は3人いる。

初老の男性一人と中年の女性二人である。

食事の用意は毎日たいへんそうである。

温かい料理を一品一品ラップでくるんだ状態でお盆に載せられてテーブルに並べられる。

朝食は食パンかロールパンにサラダと卵料理、ジュースといった内容である。

昼食と夕食は一汁三菜で昨夜は白米、煮魚、ひじきサラダ、大根の味噌汁といった内容だった。

 

 

 

 

初老の料理長は福岡からこちらに上京して来たらしい。そして彼は色々な仕事を経験して今の仕事に至ったらしい。

食事が用意できると自ら治験者たちに呼び掛けてくれる、その心遣いが温かい。

治験の常連者の人と仲良く話をしていてその会話が聞こえてくる。

食器を配膳台に戻す時に「ごちそうさまでした。」と声をかけると「はい、ありがとう。」と声を返してくれる。