治験とコミュニケーション

乾燥機の件で激昂してた人が今度は派閥を作り始めた。

一人ひとりに声をかけて乾燥機のことについて意見を求めているのである。

そして治験者同士の輪が生まれてその場の流れでグループが形成され始めたのである。

僕も少し話をした。

どうやら彼はまだ根に持っているらしく本格的に犯人を捕まえようとしていた。

そして以降、彼は何人かの知り合いとつるむようになった。

こういう風にしてグループが形成されていくのである。

ちょうど投薬日も終わり皆の緊張も解けたことが作用しているようだ。

 

 

 

 

治験者同士の触れ合いの場としてデイルームがある。

テレビが設置されていてサッカーを見ながら初対面同士がポツポツ会話をしている。

コミュニケーションルームとして成り立っているので大声で話をしている人たちもベッドのある大部屋では小声で話をしている。

実際のグループ数はわずかである。

治験者のほとんどは孤立している。

自身のベッドから動こうとしていない。

自分もその一人である。

 

 

 

 

ある日、看護師がベッドルームの人たちに体調を聞き始めた。

ほとんどの人たちが「大丈夫です。」と答えるのをよそに、ある一人の治験者が押し殺した声で「はらわたが煮えくりかえっています。」と答えた。

周囲が静まり返った。

看護師は聞こえなかったふりをして、後で再び彼を別室に呼んだ。

 

 

 

 

どうやら彼は騒音で眠れないらしかった。

就寝時間にもかかわらず、起きている人がいて、パソコンをしている。

その音が気になるみたいだった。

クリック音一つで気に触る人もいるのである。

そして彼はその鬱憤をため込んでしまい、ある日、看護師に訴えたのである。

色々とストレスが発生しているみたいだ。