投薬日での出来事

この日は治験の投薬日だった。

決まりとして、薬を飲んだ後は決められた時間、ベッドの上から動くことができなくなってしまう。

その間、トイレにも行けないし、雑用もできなくなる。

ベッドの上で待機していなければいけないのである。

各々の投薬後の体調の変化を規則正しく記録していかなければいけないからだ。

小便するだけで薬の影響が変わるのである。

採血も秒刻みで規則正しく行われる。

 

 

 

 

僕は採血に備えて投薬前に水を大量に飲むことにした。

水分摂取で血液が薄まり、量が増えると思ったからだ。

しかし運の悪いことに冷水の影響で投薬後にお腹を壊してしまいベッド上で辛い時間を過ごすことになる。

トイレに駆け込みたくてもベッドを絶つことができない。

地獄である。

医師の治験者への診断も順番に行われていて周囲は騒然としている。

その中で一人お腹の痛みをこらえながら、ひたすら時間が過ぎるのを待っていた。

何とか事なきを得たが、いやな汗をかいてしまった。

 

 

 

 

こんな情けない話を書いていて、つまりは暇なわけである。

あまりにも退屈で感覚が研ぎ澄まされているのかもしれない。

ちょっとした周囲の会話に耳をそばだてて変化をかぎ取ってしまうのである。

 

 

 

 

周囲に敏感になっている人は僕だけではない。

さっき治験者の一人が乾燥機のことで腹を立てて怒声を上げていた。

どうやら乾燥機を使っていたら誰かに途中で止められてしまったらしい。

おかげで生乾きのまま使用時間が終わってしまった。

彼の気持ちも分からないでもないが今度は犯人を突き止めようとしだしたのである。

他の人にきつく詰問するのはさすがに無理がある。

彼も疲れているのかもしれない。