カゴの中の鳥

違和感の正体がわかった。

それは文章を書くことができなくなってしまったということだ。

治験で入院していた時は何も考えずに文章を書くことができた。

しかし退院して自分の部屋に戻った途端に何も書くことができなくなってしまった。

書くことができないことに戸惑っているのである。

 

 

 

 

場所や状況が自分に作用しているのだ。

治験で集団生活を強いられていた時はやれることが限られていた。

本を読むかパソコンで文章を書くことだけだった。

けれども自分の部屋に戻るとかなり自由がきく。

何でもすることができるようになってしまう。

枠が取り払われたようなものなのかもしれない。

カゴのドアが開けられたとき、鳥はどこへ行ったらいいのかわからなくなってしまう。

 

 

 

 

戸惑っているだけではない。

自分が何をやろうとしていたのかわからなくなってしまったのである。

状況を把握することができないのだ。

自由すぎて手持無沙汰になってしまったのである。

とりあえずは足元を確認しているところなのだと思う。

今はDIYだってできるし、旅をすることだってできるのである。

 

 

 

 

書くことにしても見ている人がいると思うと何を書いていいのかわからなくなる。

そしてつまらない文章でお茶を濁してしまう。

もう治験の話を続けることはできない。

今、ここで書けることしか意識することはできない。

そしてなんだかわからない文章を書いているのである。

これも仕方ないことなのだと思う。