悪口
人の悪口を言うことができない。
いい意味で言っているのではない。
常に悪口、蔑み、呪いの言葉が頭の中にあふれているのに口に出して言うことができない、ということである。
悪口を言った瞬間に自分が罰せられてしまうのではないかと思ってしまうのである。
悪口に対して罪悪感があるのだが、TVを見るたびに、本を読むたびに知らぬ間に浮かんでくるのである。
例えば自称セレブの芸能人がテレビで好き勝手なことを話しているのを見るだけで嫉妬と呪いの言葉で頭がいっぱいになってしまう。
政治家が偉そうな態度をとっているのを見るだけで自分の中に汚い言葉があふれてくる。
女の子から黄色い声援を送られているタレントを目にするだけでその人の不幸を祈ってしまう。
賞賛されている人を見ても、あら捜ししている自分がいる。
そんな自分に疲れてしまう。
けれども賞賛されている人にさらに周囲の人たちが惜しげもなく拍手を送っているのを見るとさらに憎悪の気持ちが出てくるのである。
さらに酷いのは他人の不幸を喜んでいる自分がいることである。
もちろん口にすることはしない。
相手の前では悲痛な表情を浮かべながらも心の中では逆のことを思っているわけである。
これはさすがに疲れる。
そんな自分をひた隠しにしていることにさらに疲労してしまう。
ネットの掲示板やツイッター上に悪口や呪いの言葉を載せている人たちの気持ちがわからないでもない。
けれども書き込むことでストレスが発散されることはないということも分かっている。
むしろそういった気持ちにさせてしまう理由を知りたい。
もしかしたら自分が操られてそういう行為に及んでいるのではないかと考えてしまうのである。
つまり最近の炎上事件も悪口を書きこんでいる人たちは実は自身が操られていることに気づいていないのではないのかということを考えてしまうのである。