治験の後
もうすぐ治験期間も終了する。
投薬も無事終了し、今は一日中、自由な時間を過ごしている。
そして院内ではデイルームの一つが閉鎖されてスクリーニングテストが行われている。
他の治験の参加者を募っているのである。
続々と治験者やってきて、入れ替わり立ち替わりしているわけである。
自分もその大きな川の流れの一部分にすぎない。
僕は治験が終わった後にどうするかをまだ決めていない。
他の人たちはどうなのだろうか?
色々と話を聞いている。
治験終了日のその日の電車で実家に帰る人もいる。
その人は静岡からわざわざ東京に来て治験を受けに来たのである。
東京見物をして帰る人もいる。この人も同じ静岡から来たらしい。
次の日からすぐに働くという人もいる。
この人は常日頃から体を鍛えていてデイルームのルームランナーで汗を流している。
肉体労働者と言っていた。
他にも一日中寝ている人もいれば資格試験の勉強中の人もいる。
自分はこれからどうしよう?
とりあえず治験が終われば治験のことを書けなくなるわけだから。
他の題材を探すことになる。
僕がここを去っても看護師や給食のおじさんはここで働き続ける。
一期一会というやつである。
なんだか少し淋しくなってきた。
別に取り立てて話をしたわけでもないのに知り合いのような気分である。
そしてお互いもう二度と会う機会もないのかもしれない。